公益社団法人 日本海員掖済会 宮城利府掖済会病院

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【第43号】言った、言わない

 宮城利府掖済会病院勤務足掛け16年となる当方であるが、担当した患者さんの退院記録を閉じたファイルは19冊にも及ぶ。過去に経験した症例を探すべく退院記録ファイルに目を通したが、目を通すだけで半日仕事であった。この16年間随分と沢山の患者さんを担当してきたものである。患者さんの名前を見ても診療内容を思い出せるのは極一部である。

 昨今森友学園問題や、加計学園問題などで面会したことを覚えているかと安倍総理は問われているようだが、実際に覚えているかいないかは別として、おそらく膨大な数の人と面会しているに違いない首相が個々の面会のことを覚えているのは至難の業だろうなあと想像する。首相というのは大変だなあ。とても自分には務まらないなあと感じる。

 そういう記憶力に自信のない当方にも仕事柄過去の案件を問われることがある。頼るのはカルテ記載である。ということでカルテ記載はできるだけ詳細に書くように心がけている。また患者さんには言った、言わないの問題が生じないよう手書きの説明メモを配布したり、ハンコを使い行った医療行為を迅速に記録するようにしている。

 ところが、苦労していろいろ書いてるカルテやメモが読めないといわれるんだなあ、これが。患者さんはなんて書いてあるのと外来のあと外来の看護師にきいているみたいだし、当院のある先生からはなに書いているかわからないと言われた。また医師会の先生は当方のカルテコピーを半分笑いながら別世界の人間が書いた記載のように扱っていた。ある患者家族には当方が書いた入院治療計画書をみて『失礼だろ、書き直せ』と言われた。

 『失礼だろ、書き直せ』にどう対応したらいいかというのは長年の課題であったが、結局はパソコンに書いてもらうしかない。最近は、入院の説明をする段階から退院記録をコンピューターに打ち込んでいる。そして内容は随時改訂し、カルテに貼る。患者家族に病状説明の際はハンドアウトとして改訂した退院記録を渡して説明する。患者さんが退院するときには退院記録はほぼ完成しており、紹介元への診療情報提供書はコピペですむ。まあ電子カルテがある病院には必要のない光景ではあろうが、ハサミとのりをもって日々カルテにパソコンから打ち出した文章を切り貼りしている。 そろそろ帝国の逆襲…。もう『失礼だろ、書き直せ』とは言わせないし、『読めない』という人には『なんで読めないの、読む気がないんじゃないの』とファイトバックできるかな。あ、指示簿はなあ…。ゴミもだいぶ増やしているようでごめんなさい。

発行日:2018.07.23