公益社団法人 日本海員掖済会 宮城利府掖済会病院

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【第40号】プチ糖質制限

 『どうしても甘いものがやめられない』という患者さんがいた。明らかに糖質中毒の症状と思われたので通常は話をしない当方のMCTオイル利用の話をした。『甘い物が食べたくなるのを防ぐ方法はあるんです。実は今私が外来中に飲んでいるMCTオイル(中鎖脂肪酸)がそれです。これを加えたカフェオレを飲んでいると午後の2時~3時まで外来をやらされても空腹にならずに済んでいるし、夕方自販機のアンパンも食べずに済んでいるんです』。そしたら外来ナースの皆さんがそれ何?ときいてくるのでこの際ももんがにて一挙公開することにした。

 驚異のMCTオイルダイエット(幻冬舎)の著者畠山昌樹先生によると、現代人は糖質中毒になっているらしい。糖質中心の食事を中止し糖質中毒から離れ、かわりにMCTオイル(中鎖脂肪酸)中心の食事にすればオイルの代謝産物ケトン体でエネルギーをとることができかつインスリンの変動がなくなるので空腹にもならないと。MCTオイルは体に蓄積することがないので肥満も回避できるらしく糖質制限とMCTオイルを組み合わせた畠山先生のMCTオイルダイエットは減量効果も大きいようである。 ただ当方は患者様に畠山先生のダイエット法を勧めている訳ではなく、畠山先生の考え方を参考にしMCTオイルで外来時の空腹をコントロールしているだけなので。誤解のないように。

 しかしダイエット理論というものは自然から切り取って来た一部の事実に基づいたモデルである。必ず切り捨てた事実による暗黒面が出るのが常である。私はかつて『糖質制限時代のワインライフ』という文章を書いたことがあるが、これを読んだある人曰く『炭水化物は旨いからねえ』。糖質制限の問題はこの一語がよく物語っている。中毒症状といってしまえばそれまでだが、炭水化物は幸せの味でもあるのである。私は昼食はMCTオイルを主体とし炭水化物は少量の玄米フレークで摂取するが、玄米フレークを口にする量が増えればそれに応じて幸せ度も増すという経験をしている。また、週末生パスタをはじめとする炭水化物料理を作りワインと合わせるのを楽しみとしている手前、長期的な糖質制限は耐え難い。畠山先生のダイエット法はわからないが、糖質制限はリバウンドが大きいというのもそういう理由からなのかなと思う。

 糖質制限の効果を安全に享受できかつ継続するにはどうしたらよいか。これは前回のももんがに書いた陰陽論の応用問題である。昼食はMCTオイルと玄米フレークを主体とした糖質制限食にし(陰)、朝夕は普通の食事にする(陽)。そして平日は粗食にし(陰)、週末はワインとあう料理にする(陽)。このように陰陽のバランスをとり極端な糖質制限に走らない、すなわちプチ糖質制限にすれば糖質制限も苦痛ではないし、数年後流行りのダイエット理論が変わってもさほど大きな方向転換をすることなく対応できるだろう。注意すべきは陰陽にかかわらず甘いものと揚げ物は毒物であり極力控えることは大前提。食べる場合は毒物を食べるという覚悟を持って食べ、そのあとの対処は自己責任である。だだ昨今は忘年会シーズン。自己責任を負わされる事項がどんどん増えている自分があるというのもまた現実である。やはり炭水化物は・・・美味しい。日本漢方の一流派一貫堂は肥満治療薬として有名な防風通聖散をよく使う。一貫堂の漢方家たちは言った。美食を避けることは難しい。そこで美食による食毒を回避するために防風通聖散を出すのだと。今も昔も炭水化物をはじめとする美食を回避するのはなかなか難しいのである。

畠山昌樹先生講演会のご案内
講演会名:日本東洋医学会東北支部第20回宮城県部会 特別講演1
   と き:平成29年7月9日(日) 11:00AM前後~約一時間
      (正確な講演時間はH29.3に確定予定)
   ところ:東北大学医学部臨床大講堂
(予定、会場変更の可能性がありますので確認の上ご参加ください)
仙台市青葉区星陵町1-1 TEL:022-717-7000
お問い合わせ:日本東洋医学会東北支部宮城県部会事務局
(担当:片寄、宮城利府掖済会病院内)
   電 話:022-767-2151

発行日:2017.01.16