公益社団法人 日本海員掖済会 宮城利府掖済会病院

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【第53号】当方の医学はサグラダファミリア状態

『サクラダファミリアの写真』Tripaよりお借りしました

 当方漢方医学を学び始めて足掛け26年となる。その26年の経験を通し漢方の奥義は『胃が大事だ』ということだと感じている。ずいぶんと時間がかかったものである。最初からそう教えてくれれば早いのにと思う。10年ほど前の日本東洋医学会東北支部会で青森のある漢方の大家の先生が辞世の発表として胃腸が大事だという話をされていた。先生も長年の経験をふまえそうお感じになられたのであろう。当方に残された時間はそう長くないが、この線で診療を継続し患者さんをよくしていきたいと願っている。

 心臓を中心とした現代医学の知識からは違和感があるかもしれないが、漢方医学的には胃が体の発電所である。そして食事の乱れやストレスなどにより胃腸の機能が障害されると発電所は停電に至り様々な身体的不調が生じる。前回のももんが『からだのふしぎ』にも書いたが、甘味や冷飲食摂取などによる胃腸の機能低下が様々な病態にかかわっている例は枚挙にいとまがない。そういう患者教育をしていくことが当方の務めであろうと考えている。

 この視点でみるといくつか気づくことがある。まずオートファジー理論により朝食を抜くというやり方について。過食時の緊急避難的対応としてはよいが、朝食を抜くと胃の気がなくなり体は冷える。そして風邪に対する抵抗力は落ちる。これは当方の実体験である。それから、お湯を飲むということは胃腸をあたため、少なくとも短期的には胃気を上げる。これまでお湯はカロリーがないから飲みすぎれば胃腸を冷やすと説明してきたが、少なくとも短期的には良いと思われる。冬山では体を温めるのにお湯を持参するが、お湯で胃気が上がる実例である。

 胃の調子、すなわち胃の気は体のすべての臓器の機能にかかわると漢方医学では考えている。そしてその線に沿った診療や養生が様々な症状や病態に良い影響を及ぼすことは漢方の2000年の歴史がひとつのエビデンスである。そんなことがおぼろげながら見えてきた昨今であるが、当方に残された時間はそう長くはない。当方の医学も未完のいわばサグラダファミリア状態。そのサグラダファミリアは近年急ピッチで建設が進行し、2026年には完成するといわれている。当方の医学も完成をみることがあるのであろうか。急ピッチで完成を急がねばならないと感じている今日この頃である。

発行日:2023.08.16